復讐劇





俺が気づいたとき、俺は車の中にいた。
俺は確か、眠っていたはず…。
車の外に出て、辺りを見回す。
そこは荒野で、一本の道路が地平線の彼方まで伸びている。
ここが、アメリカなのか、オーストラリアなのか、ただ単に夢の中にしかない架空の場所なのか。
そんなことは分からないが、知っていても知らなくても大差はないだろう。
車に乗り込み、ガソリンの量を見る。
まだまだ、十分にある。
「…行けるだけ行ってみるか」
俺は、エンジンをかけた。

車を走らせてから、どれくらいの時間が経っただろうか?
目の前には、道路を飲み込む地平線。
左右の景色もほとんど同じで、まったく進んでいないように感じる。
だけど、そう進んでいるうちに、ガス欠になった。
仕方がないので、行けるところまで歩くことにした。
果てしなく続く道を、ひたすら歩く。
どれだけ歩いても、喉は渇かない。
「暑い」だとか「寒い」だとか、そういった感覚もない。
やっぱり、夢なのか。
さらに進むと、おかしなものが目に入った。
いや、「もの」という表現はおかしいかもしれない。
なぜか、その場所だけ、地面が少し盛り上がっているのだ。
しかも、わずかだが、動いている。
気になるので見ていたら、何かがゆっくり出てきた。
……人間の指だ。
だんだんと、それは這い上がってくる。
灰色のような色に変色した肌をして。
脳内にこびりつくような呻き声を出しながら。
そうして、それの顔が出たときに、俺は言葉を失った。
「なぜ………だ?」
それは、俺を一瞥して、ニヤリと笑った。
「俺はお前を殺したはずだ………。バラバラにして…、埋めたはず…だ……。なぜ、ここにいる……?」
それは、ようやく土から抜け出した。
そして、こちらへと向かってくる。
逃げようと思っても、体が動かない。
ゆっくりと、それは俺の前に立った。
声が出ない。
それは、両手を差し伸べ。
どうすることも、できない。
それは、俺の首を、絞めた。

「奥様、終わりましたよ」
「ありがとうございました、復讐屋さん」
「いえ。旦那様をあの男に殺されたと聞きました。どうか、お気を落とさずに…」
「ええ、大丈夫よ。それよりも、どうやって自分の首を絞めさせたのですか?」
「あれは、麻薬を投与して、幻覚を見せたのですよ。どんな幻覚を見たかは、本人しか知りませんが」
「そうですか。ありがとうございました。次は、あなたが死ぬ番です」
「は……?………………!お、奥さん。銃を仕舞ってください。何かの悪戯ですか?なぜ、私が死ななければならないのですか?」
「確かに、彼は私の夫を殺しました」
「だったら……なぜ!」
「彼は、私の愛人です。愛人を殺した人には、復讐しなくちゃ…」
乾いた音が1つ、空に響いた。





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