迷惑な探偵





ここに、かなり迷惑な探偵がいる。
その名は、月代 紅。
「つきしろ べに」と読む。
ちなみに、これは本名で、しかも男だ。
そして、私が、彼の助手である片桐です。

彼がどうして、「かなり迷惑」なのか…。
先ほどから、またしても警察の方に迷惑なことを…。

「これは殺人事件だ!」
うれしそうに彼は言う。
「ですから、これは単なる病死です!」
新米刑事なのだろうか、彼に必死に反論している。
慣れた人では、もう彼を相手にしていないから。
「ほら、やっぱり殺人事件じゃないか」
「どこがですか!」
「おお神よ。あなたは何て罪なんだ。私に犯人を教えてくださるとは」
「そんなに言うなら聞きますが、犯人は誰なんですか?」
「誰でもないよ。犯人は、神なのだから」
何を言っているのやら。
あまりにもばかばかしい推論に、頭が痛くなる。
探偵助手としてやっていく自信をなくしてしまいそうだ。
私がそう思っている間にも、彼と刑事との言い合いがヒートアップする。
と、私の肩を誰かがたたいた。
振り返ると、知り合いの刑事だった。
「お久しぶりです」
「どうも。月代がまたご迷惑をかけて…」
「うまくいってますか?」
「…はい?」
「いや、あの刑事は新米でね。迷惑な人への対処を、身をもって学んでもらおうということになりまして」
「…はあ……?」
「さすがに報酬は出せませんが、あの役をやっていただくように依頼したのですよ」
「え…?私はそんなこと一言も…」
「いや、月代さんに口止めされましてね。何も知らないやつが近くにいたほうが信憑性が増す、ということでしたので」
「………」
もはや、何も言えない。

まったく、彼―――月代 紅―――は、迷惑な探偵だ。





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