超迷惑な探偵





私、片桐が助手を勤めている探偵、月代 紅は相変わらず迷惑な探偵だ。

本日午前10時、とあるアパートの一室で殺人事件がありました。
殺されたのは、若い女性でした。
同棲している男性が忘れ物を取りに帰ったときに発見されました。
事情聴取をしたところ、容疑者は3人になりました。
容疑者C。被害者の同棲相手。最近、喧嘩が絶えなかったらしい。
容疑者M。被害者の弟。金を借りようとしたら、断られたらしい。
容疑者R。被害者の元彼氏。しつこく被害者に付きまとっていたらしい。
それを聞いた月代は、私にこう言った。
「関係者全員を集めるように。犯人が分かった」
何となく、いやな予感がした。

「皆さん集まりましたね」
月白は、そう言って全員を見回した。
今、ここには7人いる。月代。私。容疑者C。容疑者M。容疑者R。そして、刑事が2人。
刑事は、よく知った2人だった。蟹間刑事と、屋久刑事だ。蟹間刑事は、月代とコンビにしたら面白い仲が悪い。そして、暴走しがちな蟹間刑事を止めるのが屋久刑事の役目だ。
「この事件の犯人が分かりました。犯人は……貴方だ!!」
そう言って指差したのは、容疑者Cだった。
…………やはり、というべきか。彼を指差すだろうと思った。
私としては、犯人は容疑者Rではないかと思うのだが。まあ、しばらく様子を見るとしよう。
「な、何で俺が犯人なんだよ!どこにそんな証拠があるんだよ!!」
「証拠?貴方、コンタクトレンズをつけてますね?」
「それが何だっていうんだよ」
「そんな、ガラスを目の中に入れるなんていう非道なことをするような奴だからだ!」
「は!?」
「ガラスを目の中に入れるということは、人間がするようなことじゃない!!」
…………やはり。そういう理由で犯人にすると思った。
月代は、断固としてメガネ派で、コンタクトレンズを目の敵にしている。なので、コンタクトレンズをしている人間も目の敵にするのだ。
「じゃあ、言わせてもらうが、メガネなんて邪魔になるだけだろ!運動すれば飛んでいく時もあるし、熱いものを食べる時には曇るし。コンタクトレンズの方がいいじゃないか!」
容疑者Cが、言い返した。言い返す人がいるとは、これは珍しい。どうやら、容疑者Cは断固としてコンタクトレンズ派のようだ。
「おい、ちょっと待てよ。そんなの、工夫すればいいだろ!コンタクトレンズを付けたまま寝たら目の奥にレンズが入るらしいし、よく落とす人だっているじゃないか!だったら、メガネの方がいいじゃないか!」
ここで、容疑者Mが口を挟んだ。どうやら、彼も月代と同等にメガネ派らしい。
「それだって、工夫すればじゃないか!そんなメガネなんて古臭いものかけるような奴の気が知れないね」
ここで口を挟んだのは、蟹間刑事。コンタクトレンズ派らしい。それにしても、古臭いという意見とは…。
「古臭い!?今はメガネブームだぞ。そんなことも知らないのかよ、時代遅れ!!」
「そうだそうだ!」
月代と容疑者Mが反撃する。
「別に、コンタクトレンズに伊達メガネをかければいいだけだろ。そうしている芸能人だっているさ。ちょっとは、頭使ったら?」
「メガネ人口減少してるくせに」
負けじと、蟹間刑事と容疑者Cが言い返す。
4人で、メガネvsコンタクトレンズの大激論が繰り広げられている。
ふと横を見ると、屋久刑事と目が合った。
「裸眼ですか?」
「ええ。じゃあ…」
「私も裸眼ですよ」
「ああ、やっぱりね」
この中では、裸眼が一番冷静のようだ。
と、容疑者Rが私たちのところに近づいてきた。
「貴方が犯人ですね?」
「ええ。私がやりました」
「…貴方、裸眼ですか?」
「ええ」
「ああ、やっぱりね」
屋久刑事が、外で待機していた警官に容疑者Rを引き渡した。
4人は、彼が連行されたことにはまだ気づいていない。

それからおよそ10分後。
「さて、余興はここまでだ」
月代が、大激論の終止符を打った。
「この事件の真犯人は……って、あれ?片桐、容疑者Rはどうした?」
「もう警察に連行してありますよ」
「………。よし、よくやった。私の指示通りにいったな」
「おい、ちょっと待てよ!じゃあ、何で俺を犯人扱いしたんだよ!」
「ん?今さっき言ったじゃないか。余興はここまでだ、って」
「余興かよ!」
「そういうこと」
「このクソメガネ野郎…」
「おい、今メガネをバカにしたな!?」
また、戦いの火蓋が切って落とされた。
「指示通りにって、指示されてたんですか?」
「まさか、そんなことないですよ」
「やっぱりそうですよね」
「そうですよ」
「長くなりそうですね、今度のは」
「そうですね」

月代 紅は、とても迷惑な探偵だ。





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