管理人の山浮さん

雨漏り





私の住んでいるアパートの管理人・山浮さんは少し変わっている。
といっても、家賃や人あたりは文句ないくらい良い人だ。
ただ、思いつきで変わったことをするだけだ。
もちろん、違法行為でないものだが。


今日は、アパートの住人たち数人と山浮さんで居酒屋に来ている。
普通のアパートでは有り得ないことだが、これがこのアパートでは起こるのだ。
山浮さんが誘いに来て、集まったメンバーでいつもの居酒屋へ行くのだ。
ちなみに、お金は全て山浮さんが払ってくれる。夢のような本当の話である。
このアパートの家賃以外に稼ぎがあるのか、まったくもって謎なのだ。山浮さん ほど謎の多い人を私は知らない。
今も、山浮さんの話で隣の部屋の住人(男)と話しているところだ。

「この間、山浮さんが珍しく部屋に来てさ…」
彼は、氷の溶けてきたウイスキーを一口飲んだ。
「珍しいですね、山浮さんが部屋に行くなんて」
山浮さんは、住人の部屋に訪ねることを滅多にしない。本当に珍しい。
「部屋に来るなり、こう言うんだ。水道代を払うから風呂場の水を出しっぱなし にしてくれ、って」
彼の下の部屋は、山浮さんの部屋だ。水が漏れて困るのは山浮さんだけだ。
「何でまた、そんなことを…?」
私の手元のグラスには、氷の溶けたジン・トニック。それを一口飲んだ。
「雨漏りを体験してみたいから、だとさ。本当に変わってるよな、山浮さんって 」
「そうですね。そういえば、山浮さんがいませんけど…?」
トイレに行った風でもない。かれこれ30分くらい見ていないのだ。
「山浮さんなら、やりたいことがあるって言って、表に出たけど。また、変わっ たことをやっているんだろうな」
「そうでしょうね」
「一緒に見に行ってみますか?面白そうだし」
「いいですね、それ」


山浮さんは、少し変わっている。
私たちも、少し変わっているのかもしれない。





戻る