管理人の山浮さん

自家発電





僕の住んでいるアパートの管理人、山浮さんは少し変だ。

僕は、これからこのアパートに今日から入居するのだ。
家賃・敷金は平均的な金額で、礼金はゼロ。
不動産屋に勧められたこともあり、ここに決めたのだ。
不動産屋曰く、管理人さんは少し変な人だけどいい人らしい。
どんな人か想像がつかないけれど、これから挨拶をしに行かないと。
管理人さんの部屋は隣だった。
勇気を出して、ドアをノックする。
「は〜い」
出てきたのは、人のよさそうな感じのする人だった。
「隣に今日から住むことになった…」
「ああ、はいはい。よろしくね」
「よろしくお願いします。部屋が暗いですけど、これからお出掛けでしたか?」
「あ、いえいえ。ちょっと、自家発電で生活してみようと思いましてね」
「………はぁ……」
考えもしなかった答えに、相槌がうまく打てなかった。
不動産屋の言う通り、少し変わっているけどいい人だ。そう思った。
「あ、そうそう。明日の夜、空いてますか?」
「ええ、空いてますが…」
質問の意図が掴めない。
「明日、アパートの住人何人かで飲みに行きますけど、来られますか?」
「いえ、お金がないので…」
アパートの住人と飲みに行く管理人なんて、初めて見た。そんなことをするとは 、驚いた。
でも、山浮さんはもっと驚くことを言った。
「お金は全部私が払っているから、気にしなくてもいいよ」
あまりに驚いて、あっけにとられた。
「あ、そろそろまた発電しないとご飯が炊けなくなってしまいますから。では、 失礼します」
あっけにとられているうちに、ドアは閉まった。

少し変な人だけど、こんな管理人さんがいてもいいか、と思った。





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